第108号(平成1年1月1日)

2003年を迎えて

社団法人日本絹業協会会長吉國隆

 新年おめでとうございます。新しい年を迎えて、蚕糸絹業の新たな前進の年になることを期待しています。日本の景気は、依然不透明な状況が続いていますが、閉塞感が強い割には、国民生活はそれに安定しているとないえなくもないように思われます。

 もちろん、バブル時代におけるような派手な消費動向は影をひそめていることは事実ですが、反面で、身の回りを見つめて合理的な生活を営もうとする努力が行われ始めているといえないでしょうか。苦しい時こそ、社会も家庭もムダを排した本質的なものを追求しようとする動機が働くものだと思います。

 きものの世界でも、タンスの中に眠っているものや、中古のきものなどを活用する動きが出てきているように見受けられます。絹は、元来、親子3代にわたって使える丈夫なまた変質しない衣類であるというのが世間の常識であったと思います。使い捨ての時代に忘れられていたこのことを、このところの世間の風潮カ源い出させてくれたといえましよう。

 先日、テレビで、江戸小紋など伝統的な様式によるきものでありながら手頃な値段で売られているものが人気を博しているという報道もありました。今の人たちにとって、きものは高いもの、どこでどのように買ったらよいか分からない、また、手入れの仕方もよく知らないといったことなどがネックになっているという解説もありました。

 日本絹業協会のホームページhttp://www.silk-center.or・jp.中央蚕糸協会のホームーぺ一ジhttp://www.si1k.orjp/chuusan/では、これらの疑問に応えるための一助にと、全日本きもの振興会http://www.kimono-net.orjp/や京都和装産業振興財団http://web.kyoto-inet.or.jp/org/wasou/indexMain.htmlのホームページなどともリンクしつつ、必要な情報の提供につとめています。

 また、きもの関連業界でも、中古きものの流通などへの取り組みも次第にふえてきていることは、喜ばしいことです。今年の成人式では、きもの姿も多少復権したのではないかといわれていますが、是非そうであってほしいと思います。

 洋装の世界では、素材的にも、ファッション面でも、近年の進歩は目を見張るものがあると思います。日本の女性は、ここ数年で格段に美しくなったと思うのは、私だけでしょうか。しかも、経費的には、必ずしも一般の消費者に手の届かないような高価なものとは限らないように思われます。

 絹を利用した洋装衣料素材も、関係業界のたゆまぬ競争を通じて、素晴らしいものが非常に多く開発されてきております。繊維素材の展示会であるジャパンクリエーション(東京国際展示場)では、絹織物業界をはじめ各種の業界で作り出された、実に様々な製品がひしめいており、ファッション関係者が真剣な眼差しでこれらの素材を吟味している姿を見ると、これらの積み重ねが、女性を美しく飾っているのだということを実感できます。

 国内で生産された特徴のある繭(小石丸、世紀21など)から作られた糸をつかった製品とか、大日本蚕糸会の蚕糸科学研究所で開発された扁平光沢糸(繭糸を繰糸過程で撚らないで、ローラに接着させて光沢を出させた独特の風合いのある生糸)の活用により山形県の製糸会社と東京のファッションメーカーが提携して作った製品などが登場して消費者に歓迎されていることも嬉しいニュースです。

 伝統に培われながら、また、新しい技術の成果も導入しつつ、日本の絹文化は、たくましく生き続け、発展を遂げてやまない姿がこのようにいろいろの形で示されています。

 昨年は、国内で織られ、かつ、染められたきものなどに「日本の絹」マークをつける運動が開始されました。いま、白生地の産地組合で製品にスタンプを押す作業が進められており、やがて、これらの製品に染めが施されて作られた反物や、先染めのきもの地などで「日本の絹」マーク入りのシールのついた商品が出回ることになります。

 消費者の選択の便としてこのマークが役立ち、ひいては、国産絹製品の振興にも貢献する効果が期待されております。伝統文化を大切にする気持ちを一人でも多くの人にもってもらい、生活の中にもっともっと生かしていただけたらと思わずにはいられません。


「シルク・サミット2002in網野」を開催して

農業生物資源研究所 生活資源開発研究チーム内 シルク・サミット事務局 高林千幸

 平成13年3月、全国に点在するシルクの新しい波を起こそうということ目的として「シルク・ミュージアム・サミット2002in岡谷」開催しました。

 その時に多くの皆さんから、シルクに関する技術や文化に関心のある人に呼びかけて、もっと和を広めて、毎年「シルク・サミット」という形で開催して欲しいという要望が寄せられました。

 それに応えるかたちで同年12月に桐生市市民文化会館で“シルクヘの想いを新しい波に”をテーマに「シルク・サミット2001in桐生」を開催いたしました。

 今回は通算で第3回目ということになりますが、平成14年10月27、28日の両日、“丹後からのシルク情報の発信”をテーマに「シルク・サミット2002in網野」を丹後地域地場産業振興センター(アミテイー丹後)にて開催致しました。

 27日の午後から、特別講演として服飾評論家の市田ひろみ講師より「世界の衣裳から見えるもの」と題し、先生が33年間に亘り20万キロを旅し、世界の民族衣裳に触れ、それを通してみた日本の絹文化について語っていただきました。

 多くのスライドで各国の民族衣裳について説明頂きましたが、その中で「世界の民族衣裳はある面では伝承だけの衣裳であり、私たちの着物は刺繍、絵を描くこと、絞ることなど、みな生涯一職人と言われる一筋の道を歩いた人によってなされている。伝承だけの衣裳に比べ、工芸性、美術性、ファッション性があり、それゆえに守り伝えられ愛されてきた。これからは着物でも色々な流行を作ったり、時代に合わせたファッションとして捉えていったら良いのでは。」との言葉が印象深く残った講演でした。

 次に、同じく特別講演として、綾の手紬染織工房を主宰している秋山眞和講師より「伝統技術へのこだわり一養蚕農家と染織工房とのつながり一」と題し、綾町に染織工房のできた経緯、小石丸の育成に向けた養蚕農家とのつながり、それの座繰りによる繰糸、藍染めや貝紫などの天然染料へのこだわりなど先生が築き上げた世界を語って頂きました。先生の本物へのこだわりと、それに向けたあくなき追求の世界へ引きずり込まれた1時間でした。

 その後、活動事例報告として、多摩シルクライフ21研究会代表の小此木エツ子氏、碓氷製糸農業協同組合相談役の茂木雅雄氏、丹後織物工業組合新規事業部長の嶋津功氏、丹後デザイン塾塾長の小石原将人氏、網野町着物交流会事務局の田茂井勇人氏より、それぞれの地域で取り組んでいる事例について報告をして頂き、その後パネルディスカッション方式で、参加者との意見交流を行いました。内容の詳細につきましては、文末のホームページに掲載してあります。

 2日目の28日には見学会が行われ、午前中は丹後ちりめん製造工場(田勇機業株式会社、三共織物株式会社の2コース)、京都府織物・機械金属振興センター、丹後織物工業組合中央加工場を見学し、昼食を挟んで綾部市にあるグンゼ博物苑を見学し、午後3時に綾部駅で解散となりました。

 今回は、網野町長をはじめ網野町役場商工観光課、丹後織物工業組合の全面的なご協力と日本蚕糸学会関西支部・九州支部合同研究発表会との合同開催としたため、約180名の参加を得、盛大且っ有意義に開催することができました。

 なお、4回目のサミットは、平成15年10月9日(木)の午後から1O日(金)にかけて、横浜市中区山下町の神奈川県民ホールにおいて、シルク博物館のご協力のもと「シルク・サミット2003in横浜」として開催する予定です。蚕、シルクを素材とした各地域での取り組み(特に養蚕とのつながりの中での活動)についての事例報告、蚕糸に関する資料館、博物館の活動報告(各10〜15分の報告)を中心に参加者が主体となった報告会、パネルディスカッション、特別講演、シルク博物館等の見学会を予定しています。

 特に、事例報告では学会での発表形式で行いますので、積極的にご参加頂きますようご案内致します。

Silk New Waveのホームページ:http//www.nias.affrc.go.jp/silk_wave/hiroba/silk_wave.htm

シルク・サミット事務局連絡先:TEL.0266-22-3664 FAX0266-22-3094 E-mai1:silksummit@nias.afhc.gojp


「日本の絹」マークの表示が開始される

 本誌第104号でお知らせしたとおり社団法人日本絹業協会では、日本の伝統文化を担う国産の絹製品を消費者の皆さんにアピールすることを目的に「日本の絹」マークを制定いたしました。このマークをより多くの国民の皆さまに知っていただくために、東京きものの女王をモデルに用いたデザインのポスターとチラシを作成いたしました。

 現在、このポスターなどは、きもの生産地や流通業界など関係する団体や業者に配布をいたしております。このようなPR活動と織物産地の積極的な取り組みにより、丹後、長浜などの主な白生地産地では昨年12月から絹マークの表示が開始されました。また、京都、桐生などの織物産地でも絹マークを表示していくための準備が進められています。まもなくデパートやきもの小売店などの店頭でも絹マークが表示された反物やきものの小物などが展示されると思います。なお、社団法人日本絹業協会では絹マークのポスターやチラシなどをご希望の方に配布致しております。

イベント情報

ハイブリッド絹展’03
■もっと知らせたいシルクのすぱらしさ
日時平成15年2月4日(火)14:00〜17:00
5日(水)・6日(木)10:00〜17:00
場所東京・有楽町「蚕糸会館」6階
主催シルク開発センター
後援農林水産省、日本絹人繊織物工業会ほか
協力農畜産業振興事業団、(財)犬日本蚕糸会ほか
お間合せシルク開発センター
TEL・FAX03-3364-0469(道鎮)
「第18回ぐんまシルク展」
■〜もっと知ろう!もっと遊ぼう!「ぐんまシルク」〜
日時平成15年2月7日(金)〜2月16日(日)
場所群馬県立日本絹の里(群馬郡群馬町金古888-1)
主催群馬県絹需要増進協議会

編集協力:農林水産省特産振興課/農畜産業振興事業団